「不動産テックのバトンをつなぎたい」不動産テック協会創設者がいえらぶGROUPに事業を託す理由

#庭山健一 #インタビュー #いえらぶのビジネス

2024.02.15 THU

リマールエステート株式会社 創業者・代表取締役
不動産テック協会 創設者・顧問
衆議院議員

    赤木正幸

    森ビル・インベストメント投資部長、三菱商事合弁会社 MSAM代表を経てリマールエステートを起業。不動産テック協会を創設。BtoBの不動産売買業務向けSaaS「キマール」を通して不動産業界の流通活性に取り組むとともに、2021年より衆議院議員(兵庫4区)としても不動産業界の革新に尽力。国土交通委員会理事や国会対策副委員長を歴任。

    株式会社いえらぶGROUP
    共同創業者・常務取締役

      庭山健一

      マンションデベロッパーの勤務経験を活かして、2008年に代表 岩名とともにいえらぶGROUPを共同設立。2014年に常務取締役に就任。設立から現在に至るまで、代表の右腕として営業組織を牽引。「不動産会社様にとってのIT事業部として、不動産業界に関わる全ての人を笑顔にしたい」、このシンプルな信念を胸に、がむしゃらな日々を過ごす。

      いえらぶGROUPはリマールエステートの不動産売買プラットフォーム「キマール」を事業譲受しました(プレスリリース)。本対談では、リマールエステートの創業者で代表を務める赤木正幸氏と、いえらぶGROUP共同創業者で常務取締役の庭山健一が、事業譲渡に至った経緯・今後の事業展開・不動産テックの未来について語ります。

      「不動産業界をより良く」という情熱が一致

      ー 不動産売買プラットフォーム「キマール」について教えてください

      赤木正幸氏(以下、赤木氏) 「キマール」は不動産売買取引に不可欠な新規人脈と非公開物件の獲得から、物件紹介と商談成約までの業務プロセスを一気通貫で対応できる業界唯一のDXツールです。主にBtoBの不動産流通に関わるCRMの提供、AIを活用したマッチングを通して、業務を効率化できるとともに成約機会を増やすことができます。

      ー 「キマール」には、どのような強みがありますか?

      赤木氏 不動産売買に関するさまざまな経験とノウハウを活かして作ったサービスなので、実際のBtoB取引における使いやすさと即効性を重視しています。シンプルな設計なので、ITが苦手な方にも受け入れられており、従業員2名の会社様から近鉄不動産様・大東建託様・丸紅都市開発様といった大手企業まで幅広く導入いただいています。

      ー 創業の経緯を教えてください


      赤木氏 私は大学院までまちづくりや行政学を研究していました。その後研究だけでは物足りなくなり、ビジネスの世界で研究内容を実践するために不動産業界に入りました。森ビル・インベストメントでは不動産ファンドの運用や不動産の売買に数多く関わり、その時の経験が起業につながっています。
      自身の経験だけでなく同業者や仲間達からアイディアや困りごとをたくさん聞き、それをビジネスネタとして温めていました。アメリカの知人から不動産テックが盛り上がっていることを聞き、実際にニューヨークまで行ってその勢いや破壊力を感じたことを今でも覚えています。

      そして、日本でもITやテクノロジーを活用することで多くのことが実現できると確信して起業したのがリマールエステートです。
      同社の起業準備の一環で作った「不動産テック カオスマップ」をきっかけとして、日本の不動産業界を変える志を持つ同志とともに不動産テック協会も設立しました。

      いえらぶGROUPさんはどのような経緯で創業されたのですか?

      庭山健一(以下、庭山) 実は、いえらぶGROUPの創業メンバーも不動産業界出身で、マンションデベロッパーのIT事業部が前身です。Excelにデータを入力するだけでIT化と言われる時代でした。そこから独立し、全ての不動産会社様のIT事業部になるべく走り続け17年ほどが経ちます。いえらぶGROUPが提供するサービスで一気通貫した業務効率化を行い、「もっと顧客と向き合う時間に専念していただくこと」を目指しています。

      一気通貫・一元化という共通点

      ー 互いの事業に対してどのようなイメージを持っていましたか? 

      赤木氏 もともといえらぶGROUPさんには、賃貸が強い印象を持っていたのですが、売買向けのCRMや業者間流通サービスなど、売買領域のサービスが増えていると知ってから「ご一緒できる部分があるのでは」と、ひそかに注目していました。そして、一気通貫して効率化しようというコンセプト、先ほど庭山さんが口にした「不動産会社のIT事業部」という寄り添うスタンスに魅力を感じました。


      庭山 ありがとうございます。やはり一元化してこそ、不動産会社様の業務を楽にできると実感しています。近年、賃貸仲介専門だった会社様が売買仲介を始める事例も増えてきました。売買業務は賃貸以上にアナログな部分が多かったため、売買領域のサービスに注力しています。

      「キマール」は現場視点で開発されているため、かゆい所に手が届く精度の高いサービスだと感じました。BtoBの不動産流通は、エンドユーザーを顧客とする売買仲介より人脈やノウハウが属人的なのでDXできる余地が大きいです。

      ー 事業譲渡に至った経緯を教えてください

      赤木氏 不動産業界を盛り上げるには事業だけでなく法制度の変革や行政との連携も必要だと考え、2021年に国政にチャレンジし国会議員となりました。国会議員をしながらリマールエステートのSaaS事業と不動産事業を統括していましたが、「SaaS事業をさらに成長させ、業界を変えるサービスにするにはパートナー会社と取り組むことが重要だ」と考えるに至りました。誰でも良いわけではなく、やはり「信頼できる誰かと一緒に夢を実現したい」という部分が最も重要でした。そこで不動産業界の知人に相談し、紹介いただいたのが庭山さんです。

      庭山さんの不動産会社に寄り添う姿勢や、社内で若い方々が活躍していることも心強く、いえらぶGROUPさんにお任せしたいと思った次第です。ちょうど直近でグループ会社を増やして、グループシナジーを出している点にも安心感がありました。

      庭山 ありがとうございます。当社は「不動産会社様のお困りごとを全て解決したい」と、グループ会社も含めて幅広く業務支援をしています。ちょうど先ほどお話したように売買領域に注力し始めていたので、非常に力強い事業が加わってとても楽しみです。

      二人が描く不動産業界・日本の未来

      ー お二人が感じる不動産業界の課題を教えてください

      赤木氏 不動産テック事業を立ち上げたのは「DXにより不動産業界の生産性と精度をもっと上げられる」と思ったからです。
      BtoBの不動産流通においては、取得した物件情報をデータベース化している会社自体が少ないですし、エクセル・フォルダ・メールの世界から抜け出せていません。物件情報の社内共有もメールのCC送信や口頭といった具合です。
      一方、平均年齢が高く小さい会社も多いため、大規模で複雑なツールの導入は難しく導入しても使いこなせないという課題もあります。だからこそ、いかに簡単に導入して活用できるかが重要であり、「キマール」の開発でもこの点を最も重視しました。

      庭山 平均年齢の高さに加え、人手不足も深刻な課題の一つです。人手不足による業務過多が離職につながり、離職による業務過多が生じる負のスパイラルに陥っています。赤木さんが言うように導入しても使いこなせないと意味がないので、できる範囲でツールを導入いただき、業務を効率化していただければと思っています。
      また、エンドユーザーの「オンラインでできることを増やしてしてほしい」というニーズにまだまだ追いついていないと感じています。たとえば、2022年に不動産取引における電子契約が全面解禁されました。しかし、当社が昨年行った調査では「使いたい」と答えたZ世代の割合が80%を超えたのに対し、導入している賃貸管理会社は13.7%でした。


      ー 今後の赤木代表の目標を教えてください

      赤木氏 私は、日本は再び強くなれると信じています。日本の力を取り戻し、さらに成長させていくのは、われわれの世代の最も重要な課題です。あらゆる活動の基盤でもある不動産を扱う不動産業界の役割は、実は非常に大きいと考えています。
      少子高齢化を受けて日本人の生活スタイルは変わらざるを得ません。さらに、コロナによってリモートワークやワーケーション、二拠点生活というICTを活用した新しい生活スタイルや働き方が一気に広がりました。一方、空き家問題やマンションの立替問題、中小ビルの老朽化問題という、これまでの日本が積み残してきた課題も蓄積しています。


      不動産業界は、このような新しい変化とともに、古くから積み残されてきた課題に対応しなければならない非常に困難な状況にあります。法整備や行政だけでこれらに対応することは不可能です。やはり不動産業界で活躍されている方々が、業務効率化と高付加価値化を進めることが重要です。
      目の前に積み上げられた仕事を効率的に片付けながら、同時に新しいことにチャレンジする。これを実現できるのが不動産テックです。不動産テックは、日本を再生するための万能なツールとして、日本全体の不動産事業者が手にする非常に強力な武器になりうると考えています。

      庭山 不動産テックの可能性については、私も共感するところです。
      当社サービスで挙げると、「いえらぶCLOUD」を活用したリモートワークや、場所を問わず使用できる電子契約システム「いえらぶサイン」の導入も進んでいます。

      また、古くからの問題が山積している地方圏でも、不動産会社様が前向きに動き始めてきた実感があります。昨年は、熊本のコスギ不動産様島根の朝日住宅様にサービスを導入いただきました。各エリアの大手不動産会社様をきっかけに、さらにDXが進んでいくと思われます。
      また、沖縄の不動産会社様からは「沖縄本島に行かずに契約できると顧客に喜ばれる」と伺っており、移動距離が長くなりがちな地方だからこそDXの真価が発揮されると思っています。

      ー 今後のいえらぶGROUPの展望を教えてください

      庭山 2024年の1月末には20年ぶりにマンション法(区分所有法)の改正要綱案がまとまりました。法案が成立するとマンションの建て替え決議が通りやすくなり、不動産売買の流通が活性化すると見込まれます。空き家に関わる法改正もありましたし、いえらぶGROUPとしても売買領域のアクセルを踏むタイミングで「キマール」事業を譲受できました。
      これまで得意としてきた賃貸仲介・賃貸管理のサービスを伸ばしていくことはもちろん、「キマール」のノウハウ、AIマッチングやBtoBの顧客管理をはじめとする機能を活用し、売買流通のさらなる効率化を目指します。

      赤木氏 BtoB領域の不動産売買はまさに「キマール」が得意とするところです。ますます対応できる領域が増えて楽しみですね!

      庭山 ありがとうございます!今後ともいえらぶが不動産取引業に参入することはありませんが、幅広い領域から不動産会社様に寄り添い、私は事業から、赤木さんは立法と不動産事業から、不動産業界を盛り上げていきたいですね。

      赤木氏 リマールエステートは不動産事業に特化した会社になり、私も政治の世界により注力していきますが、同じ目標を持つ同志がいることが、とても心強いです。今後ともどうぞよろしくお願いします。

      参考リンク

      【プレスリリース】
      いえらぶGROUPがリマールエステートの「キマール」を事業譲受!売買業務支援サービスを強化
      https://ielove-cloud.jp/news/entry-751

      【プレスリリース】
      不動産売買業務のDXを促進する売買版「業者間サイト」「スマホで物確」「ぶっかく自動応答」を提供開始!
      https://ielove-cloud.jp/news/entry-719/

      【プレスリリース】不動産の電子契約に関する調査2023
      https://ielove-cloud.jp/news/entry-552/

      【プレスリリース】空き家に関する状況調査
      https://ielove-cloud.jp/news/entry-707/

      【プレスリリース】
      管理戸数約18,000戸のコスギ不動産リーシングが「いえらぶBB」を導入
      https://ielove-cloud.jp/news/entry-514/

      【プレスリリース】
      島根県管理戸数1位の朝日住宅が「いえらぶBB」を導入!
      https://ielove-cloud.jp/news/entry-600/